夢をあきらめずに

You may say I’m a dreamer. But I'm not the only one.

塩川にて

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すぐ目の前の採石場から続々と、赤土土砂を満載にしたダンプが塩川港へやってくる。
ダンプは港に着岸した台船へ乗り込み、荷台を傾けてダンプ百数十台分の赤土土砂の山を台船に積み上げる。
赤土土砂でいっぱいになった台船は港を離れ、沖合で待つ「ガット」と呼ばれるグラブ・バッケットの装備された運搬船(通称ガット船)に横づけする。
ガット船はグラブ・バケットを使って、クレーンゲームのように台船から赤土土砂の山を瀬取りする。
積載量が満たされたガット船は大浦湾へ向かう。
これが塩川港での赤土土砂搬出作業だ。

 

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沖縄県には赤土等流失防止条例があり、赤土が河川や海へ流れ込むことによる水質汚濁は厳しく取り締まられている。
赤土による水の濁りはサンゴの光合成を阻害するなど、自然環境に大きなダメージを与えるからだ。
辺野古の埋め立てに使われる土砂は「岩ズリ」と呼ばれる、採石の際に出てくる砕けた岩の屑が使われる計画になっている。
しかし、実際には岩ズリとは名ばかりの赤土が、従来の岩ズリの3倍の高値で取引され使用されている。

この違法な土砂の投入が、もう一年以上野放しになって強行され続けている。

 

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サンゴの海へ投げ込まれる赤土は、言わば「花畑を踏み荒らす足」だ。

それを止めることは思想信条がどうのという以前に、当たり前のことだ。
しかし、ダンプに抗議しようと近づく我々は機動隊によって排除される。
赤土を積んだ船にカヌーで近づけば、海上保安庁によって行く手を阻まれる。

 

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「どう見てもあれは赤土でしょ
赤土を海に入れたらサンゴが死ぬんだよ
だから赤土を海に入れたらダメだって条例があるんだよ
あなたたちも毎日ダンプで何が運ばれてるかを見て、違法工事が行われてると知ってるでしょう」

 

塩川港で目の前に立ちはだかった若い機動隊員に、語りかけてみる。
しかし、彼の目の表情は真黒なサングラスで隠されていて読み取れない。

 

「違法なことを取り締まるのが警察の仕事でしょ
なのに目の前のダンプを警察は取り締まらない
海では海上保安庁も違法な船を取り締まらない
この違法行為を誰が取り締まるんだろうね
一体いつまでこの無法な状態が続くんだろうね」

 

彼は何も答えない。

 

「仕事で上からの指示通りにやらなければならない事があるのは分かるよ
でも実際にここで何が行われているか
目の前のダンプや抗議する人だけを見てたんじゃその本質は分からないよ
これを誰がやらせてるのか
これを強行しろって指示を出してる政府の人間がどんな人間か
今、国会でどれだけひどい答弁で自分の悪事をごまかしているか
そういうのも一緒に見ないと分からないよ」

 

そしたら、不意に彼がぼそっと答えた。

 

「それは自分も見てますよ。あれはダメだと思ってます」

 

それが分かっているなら、僕にはそれ以上彼にかける言葉は無かった。
僕は彼のそばを離れた。

 

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