100パーセントの喪失
辺野古 3/23
辺野古イノーの工事は、西側のK3護岸と東側のK4護岸の両側から護岸が着々と伸びている。
K1,K2,K3,K4と海を横切ってきた護岸のラインが中仕切り護岸N5とつながって、全長1.6kmの護岸でイノーの広大な範囲を囲い込み、そこへ最初の土砂を投入しようという計画だ。
その1.6kmの半分以上は護岸を形成する捨て石が既に投下済みで、外海と分断されている。
(黒く塗った部分が捨て石投下済み護岸)
(左手前がK3護岸。沖へ200m伸びた後、直角に左折し、右奥のK4護岸へとつながっていく)
現在の進捗状況は基地建設工事全体から見れば、たった数パーセントだという見方もあるが、彼らが身勝手に作った計画を分母にしたところで現状の本質は見えてこない。
(K3護岸の捨て石)
(K3護岸)
大量に海に投げ込まれた捨て石によって、ジュゴンの餌であるアマモの草原は、もう広範囲で踏み荒らされている。
(K4護岸。K3護岸とつなげるべく西へと伸ばしている)
鮮やかな青色で浅瀬を彩る、小さく可愛いルリスズメダイの群れはどれ程押しつぶされたか。
毎年初夏になるとエリグロアジサシが巣を作るシュワブ岩は護岸の囲いの内側に取り込まれてしまった。
そこは埋め立てられ滑走路となる。
土砂が入り始めれば、海中の餌を求めて水面へ一直線にダイブしていく機敏な渡り鳥の姿は二度と見られないだろう。
護岸によって海と切り離される浜は海亀の産卵場所だ。
辺野古イノーへ産卵に戻ってきたた海亀は、変わり果てた故郷から締め出され途方に暮れることになる。
(エメラルドグリーンの海と青く澄んだ空を見れば、この場所を埋め立てて米軍基地を作ることの愚かさが誰でも分かるはずだ)
今のペースで工事が進めば、5月の末か6月のはじめには護岸の囲い込みは完了すると言われている。
囲われた広大な海域は、外の潮流から遮断され、内側に取り残された命は一つ残らず土砂で殺される。
その時点で基地建設工事の何パーセントに至るのか知らないが、殺された命ひとつひとつにとっては、全てが失われたことになる。
今日捨て石の下敷きになったルリスズメダイにとっては、命の100パーセントが奪われたのだ。
今、辺野古で起こっているのは、この100パーセントの命の喪失がどんどん積み上がっていくという事態だ。
行き着くところには、この基地が引き起こす戦禍による何十万、何百万という人命の喪失が待っている。
ここから目をそらし、明るい未来のビジョンを描いたところで、そのビジョンにはたどり着かない。
(K4護岸)
(K3護岸。捨て石の上に立つ海上保安官は何を守っているのか? それが“海の安全”でないことは確かだ)
辺野古の新基地建設は沖縄問題、基地問題である前に、命の問題なのである。