カート・ヴォネガット『国のない男』より抜粋 その4
悪しき指導者は絶大な力を持っていた。そして彼らはふたたび勝利したのだ。まさにばい菌だ。指導者たちは自分たちの本音も明らかにした。それを今日のわれわれは正しく認識すべきだと思う。彼らは人の命を救うことなんかにはまったく興味がない。彼らにとって重要なのは耳を傾けてもらうことだ。素直に聞いてくれる人がいる限り、それがどんなに愚かな内容であっても、彼らの考えはどこまでもどこまでも続いていく。もし彼らが憎んでいるものがあるとすれば、それは賢い人間なのだ。
だから、賢い人間になろう。そしてわれわれの命を救い、みんなの命を救ってほしい。誇り高くあってほしい。
カート・ヴォネガット『国のない男』 より抜粋 その3
音楽に話を戻そう。音楽のない人生よりも音楽のある人生のほうが楽しい、という人がほとんどだろう。軍楽隊の演奏であっても、平和主義者のわたしでさえ、聞くと楽しくなってくる。わたしはシュトラウスやモーツァルトなんかが大好きだが、アフリカ系アメリカ人がまだ奴隷の頃に全世界に与えてくれた贈り物はとても貴重だ。この音楽こそ、いまでも多くの外国人がわれわれのことをほんの少しは好きでいてくれる唯一の理由だといってもいい。世界中に広がっている鬱状態によくきく特効薬は、ブルースという名前の贈り物だ。今日のポップ・ミュージック➖ジャズ、スウィング、ビバップ、エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、ストーンズ、ロックンロール、ヒップホップなどなど➖すべてはこのブルースがルーツといっていい。
(中略)
アルバート・マリといういい作家がいる。ジャズ史に詳しい、わたしの親しい友人だ。彼からこんなことを聞いたことがある。アメリカの奴隷時代➖われわれは当時の残虐な行為から完全に解放されることは不可能だろう➖、奴隷所有者の自殺率は、奴隷の自殺率をはるかに超えていたらしい。
マリによれば、その理由は、奴隷たちが絶望の対処法を知っていたからだということだ。白人の奴隷所有者たちにはそれがなかった。奴隷たちは自殺という疫病神を、ブルースを演奏したり歌ったりして追い払っていたのだ。マリはほかにも、なるほどと思うようなことを言った。ブルースは絶望を家の外に追い出すことはできないが、演奏すれば、その部屋の隅に追いやることはできる。どうか、よく覚えておいてほしい。
外国人がわれわれを愛してくれているのはジャズのおかげだ。外国人がわれわれを憎むのは、われわれがいわゆる自由と正義を押しつけようとしているからではない。われわれが憎まれているのは、われわれの傲慢さゆえなのだ。
カート・ヴォネガット『国のない男』より 抜粋
「進化」なんてくそくらえ、というのがわたしの意見だ。人間というのは、何かの間違いなのだ。われわれは、この銀河系で唯一の生命あふれるすばらしい惑星をぼろぼろにしてしまった。それも、この百年ほどのお祭り騒ぎにも似た交通手段の発達によって。うちの政府がドラッグに戦いを挑んでいるって?ドラッグよりガソリンと戦ってほしい。われわれの破壊中毒こそが問題なのだ!車にガソリンを入れて、時速百五、六十キロで走って、近所の犬をはねて、徹底的に大気を汚染していく。ホモ・サピエンス(知恵ある人)を自称していながら、なんでそんなめちゃくちゃをする?さ、この地球をぶっ壊そうぜ。だれか原子爆弾を持ってないか?そんなもの、いまはだれだって持ってるって。
これは一体誰のためだ?
辺野古 3/10
オレは打ち砕かれ
荷台に積みあげられ
陽に焼かれ
雨に洗われながら
揺られ揺られて
走る車列は人々を押しのけ
ゲートを抜けて運び込まれ
砂塵をたててモッコに落とされ
クレーンで吊られて
海へと捨てられ
海水を濁らせ
海草を潰し
魚の住処を奪い
珊瑚を踏みつけ
潮流を変え
ジュゴンを遠ざけ
ウミガメを諦めさせ
アジサシを追いやり
すっかり海を殺して
基地の支えとなり
そこから爆撃機が飛び立ち
その行く先では街が壊され
無差別に人が殺され
この島に報復の戦を呼び込み
平和を壊し
未来を壊し
夢を描けない世界を作り出す
さて、これは一体誰のためだ?
新世界を求めて
踊るように海を渡ってきた
侵略者の歌が聞こえる
500年の歳月が流れたが
人間は相変わらず愚かで野蛮だ
略奪と殺戮が無くならない
人を食い物にする生き方をやめない者たちが世界を回している
しかし、それに抗う人々は世界の至る所にどの時代も存在した
これはありふれた闘いで
決して負け続けてきたわけではない
やられっぱなしじゃなかったんだ
Neil Young "CORTEZ THE KILLER" (Without Doubt, Best Version Ever !!!)