夢をあきらめずに

You may say I’m a dreamer. But I'm not the only one.

ナオミ・クライン著『これがすべてを変える 資本主義vs.気候変動』

ナオミ・クライン著『これがすべてを変える 資本主義vs.気候変動』

 

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2014年に書かれた、上下巻合わせて600ページを超えるボリュームの書。

3月末に図書館で借りて読み始め、ようやく読み終えた。

新型ウイルス感染拡大を防止するため、図書館が長期閉館となり、借りっぱなしでよかったのに加えて、自宅で過ごす時間がたっぷりあったこともラッキーだった。気になる箇所はノートに写したり、ネットで検索して理解を深めたりしながらじっくりと読み進むことができた。

 

化石燃料を燃やすことで排出される温室効果ガスによる気候変動と、石炭や石油、シェールガスといった地下資源の採掘、精製、輸送に伴う凄まじい環境破壊、それらに抗う世界中の人々とその運動を潰すために働く強大な力などについて、ナオミ・クラインは様々な切り口で重ねた取材を基に、冷徹な思慮と深い情熱をもって描いた。

産業革命以来、人類の化石燃料依存が溜め込んだ環境への負債は、既に異常気象というかたちで様々な兆候を見せている。蓄積による悪影響の連鎖が急激に起こり不可逆的な破滅に陥るティッピングポイントまでの残された時間はわずか10年足らずだと言われる危機的な状況であるにもかかわらず、温室効果ガス削減に世界規模の有効な歯止めがかからないのは、世界に蔓延している経済優先主義、自然環境からの乖離と自然軽視、搾取と犠牲によって成り立つ社会構造といった、現代の人類の生き方そのものの破綻によるものだと指摘している。

つまりは、今まで通りの生活を続けて破滅へ至るのか、それを回避するための新しい価値観に基づくライフスタイルへと切り替えるのか、わたしたち一人ひとりが選択を迫られているのだ。

 

新型ウイルスのパンデミックによって、はからずも経済活動の抑制が世界的規模で余儀なくされ、温室効果ガスの排出が一時的に減少することで今までに無かった環境改善の兆しがほんの少し見え始めている。

世界中を飛び回り、終わりのない経済成長を追い求め、飽くなき欲望によって地球を消費し尽くす社会のあり方から、少し離れて客観視する時間を多くの人が手にする機会ともなった。

この疫病蔓延は大きな災厄ではあるが、目の前に迫る破滅に向き合おうとしない人類に与えられた最後のチャンスでもある。

 

巻末に書かれた言葉を読んだ時に、この時期にこの本を手にしたことは、決して偶然ではないという気がした。

 

「こう考えてみると、次に危機が起きたとき、再び街頭や広場を人々が埋めつくし、みながそれを驚きの目で見ることになるのは間違いない。真の問題は、進歩派がそうした瞬間から何を生み出せるか、その機会をどれだけの力と確信をもって捉えることができるかということだ。というのも、突如として不可能が可能に変わるこうした瞬間は、耐えがたいほど稀にしかない、貴重なものだからだ。だからそこから多くを生み出さなければならない。次にそういう瞬間がやってきたとき、ただ世界の現状を非難し、束の間の限られた解放空間を築くだけに費やすわけにはいかない。すべての人間が安全に生きられる世界を現実につくり出すための触媒としなくてはならない。それ以下で事足れりとするには、事はあまりにも重大であり、時間はあまりにも少ない。」

 

人類はこの地球という生命体を脅かすウイルスなのか、それとも自らを律し、あらゆる生命を有する自然の摂理のなかで謙虚に共生の道を歩む大自然の一部なのか、わたしたちが何者なのかが間もなく暴かれる。

結末はわたしたち次第だ。

 

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