夢をあきらめずに

沖縄暮らしの記録

『非戦・対話・NGO 国境を越え、世代を受け継ぐ 私たちの歩み』より抜粋 その6

f:id:yamasa-kick:20180721182242j:image

 

第7話 木口由香 『「普通の人たち」から学んだ力』

 

 

「貧民会議」が成し遂げたことの凄さは、ある程度時間が経ってわかってきた。パクムンの人たちは、しばしば抗議行動の中で「違法」な行動を取った。竹はしごをかけ数百人で首相府に入り込み、公的機関の敷地を占拠する。行動はあくまで非暴力だが、警備側を挑発し暴力を誘発させる。数百人の逮捕者やけが人が出れば、世論も村人に同情的になり、政府を事態収束のための交渉のテーブルに着かせることができた。貧しい農民たちのデモは、背後に政治家がいて日当を受け取って行われている、と蔑まれてきた。だが、パクムンの村人は数ヵ月間、時には数年にわたる行動で、自分たちの意思を示し続けた。政府から獲得した譲歩のすべてはこうした行動の結果であり、これまでのタイでは見られなかった現象だった。

ワニダーさんはよく、「法を破ることを恐れないで。法は金持ちのために作られたもので、初めから貧民に不利にできている」と住民に語りかけていた。そして貧民と共に逮捕された。世界有数の大富豪と年収数十万円の農民がいる国、人口の二割が国土の八割を所有しているタイで、法制度のすべてが国民に平等であるとは言いがたい。その法を変えるためには国会を通さなければならない。しかし、議員は貧困層の声を受けて当選しても、国会に行くと態度を変えてしまうことがほとんどだ。だからデモなどの非暴力直接行動は、貧しい人たちにとっては自分たちの声を国会に届ける唯一の手段と言っても過言ではない。一人では、あるいは一カ所では潰されてしまう声も、「貧民会議」のように多くの運動を結集させれば、社会を動かす力になる。ワニダーさんはそうした考えのもとで行動したのだろう。適法であることに縛られる日本人の私から見て、彼女の考え方は過激に思えたが、タイの状況を理解するにつれ、学ぶべきことが多いと気がついた。

 

f:id:yamasa-kick:20180721184900j:image