夢をあきらめずに

You may say I’m a dreamer. But I'm not the only one.

『非戦・対話・NGO 国境を越え、世代を受け継ぐ 私たちの歩み』より抜粋

f:id:yamasa-kick:20180706001155j:image

第1話 谷山 博史『個人史の中の非戦 』より

 

 

安保法制を批判し、戦争に反対するだけでは戦争は止められない。戦争への加担も避けることはできない。

地球上の化石燃料や鉱物資源、水、森林、土地などの自然資源は、ここ数十年の間に急激なスピードで枯渇に向かい、地球の温暖化を加速させ、貧困地域をどんどん拡大させている。その責任はむろん経済成長一辺倒の私たち先進国にあるのだが、近年では新興国が同じ舞台に登場し、資源争奪戦に加わるようになった。希少化する資源の争奪は、今後さらに加速するであろうとも言われている。だとすればどうなるか。各国が武力を用いて奪い合うか、経済戦争によって奪い合うか、どちらにせよ自然資源を生活の糧として慎ましく暮らしてきた途上国の人々から奪う点では同じである。

私たちが言う「非戦」の先には、この問題が厳然と立ちはだかっている。非戦を貫くには、今や私たちは地球上の資源と環境を食いつぶす必要のない、「脱成長」の経済へと舵を切るしかないのである。それは「武力や収奪に依存しない経済をつくる」ということであり、奪う豊かさではなく、「自足する豊かさ」「分かち合う豊かさ」の実現ということである。

 

f:id:yamasa-kick:20180706003207j:image

 

残されたチャンス

辺野古 6/28

 

朝、いつものようにテント2に海上行動メンバーが集合した頃。

ミーティングが始まったというのに、ミケはまだぐっすり眠っている。

 

f:id:yamasa-kick:20180630220031j:image

f:id:yamasa-kick:20180630223410j:plain

f:id:yamasa-kick:20180630220119j:image

 

護岸工事は着々と進み、もう終盤を迎えている。

作業ポイントAは先週のうちに予定長に達し、先端部を既に袋材で固めた。

ポイントBも昨日先端部に袋材が置かれてしまった。

AとBは護岸をつないで閉じずに、このまま50mの隙間を開けておくそうだ。

内側に残された希少珊瑚の移植が県から許可されないので、沖縄防衛局はポンプで外側の海水を珊瑚に送りながらしばらく待つという、前代未聞の方策を採った。

この方法で珊瑚が守れるという確証などどこにも無いというのに。

護岸工事をもっと早く中断して、海水が囲いの中まで十分に入り込む状態で待つという、最も確実で手間をかけずに珊瑚を守れる方法を、沖縄防衛局は思いもつかなかったようだ。

 

f:id:yamasa-kick:20180630220508j:image

 

f:id:yamasa-kick:20180630220301j:image

 

ABの隙間からは奥の海岸線に沿って作られた仮設道路が見える。

こちらも残り数メートルでつながりそうで、砂浜が見える部分はほんの僅かしかない。

このあたりの砂浜は初夏にはウミガメが産卵に戻ってくる場所だ。

ちょうど満月にあたるこの日、海保に拘束されゴムボートで松田ぬ浜へ戻される間に、何匹ものウミガメの姿を見た。

満月の日には産卵のために浜へ上がるウミガメが増えるそうだ。

しかし、護岸や仮設道路で遮られて、ウミガメが産卵に上がれる砂浜はもう辺野古には無い。

こんなに頻繁にウミガメを見かけるのは、産卵場所を探してウミガメが途方に暮れているからに違いない。

この話を海保には何度も聞かせているが、彼らも言葉を詰まらせるばかりだ。

彷徨うウミガメについて、責任のある言葉を何か言わなければならない人間は、現場には一切現れない。

やがて護岸が閉じられてしまえば、僕らはその内側に近づくことはおろか、中の様子を見る事さえ出来ない。

 

f:id:yamasa-kick:20180630220431j:image

f:id:yamasa-kick:20180630220912j:image

 

ポイントCがN3護岸へ到達し、埋立区域②ー1が外海と切り離されるまでは、残りもう20数m程。

この場所は水深が浅く、多くの捨て石を必要としない。

あと数日で護岸が閉じられてしまうだろう。

この区域だけでも面積にしてドーム球場1.3個分の広さになる。

どれだけの命がそこをすみかとしているのだろうか。

護岸が閉じられ外海と切り離されたら、そこに生きる命はほとんど死滅してしまうだろう。

炎天下に窓を閉め切った車内に閉じ込められたら人はどうなるか。

その息苦しさを想像すれば、これが看過できる事態かどうかは明らかなはずだ。

8月に土砂が投入されるのは、もうとっくに命が死に絶えた後のことだ。

命が殺されてしまう瞬間を現場で遅らせるチャンスは、あとどれだけ残されているだろう。

 

f:id:yamasa-kick:20180630221013j:image

f:id:yamasa-kick:20180630220840j:image

午前午後とカヌーで何度もオイルフェンスを越えた。

たった7,8艇のカヌーに対しても海保は警備の手を緩めなかった。

カヌーを引き上げようとオイルフェンスに跨っただけで、海保が詰め寄ってくる。

どうにか隙をみてフェンスを越えても、高速のゴムボートにはスピードでは勝てない。

カヌーを切り返し、小回りでゴムボートを振り切ろうとするが数メートルで捕まってしまうことがほとんど。

上手くいかないことの連続で、ストレスはたまる一方だ。

その後、カヌーからGBに乗せられて、ノロノロ運転で時間をかけて浜まで運ばれ解放される。

そうやって抗議時間を無駄に使わせるのだ。

強い日差しにさらされ、スピードを出さないGBの上では風を受けることも無く、次第に体力も消耗する。

それでも仲間の動力船にサポートを受けながら、何度も現場へ戻る。

 

午後、干潮時に辺野古崎近くの浅くなった岩場を狙って、カヌーをオイルフェンス外に残して数名が海に飛び込んだ。

そのことを危険だとして、海保はGBのスピードをさらに落とし、たっぷり1時間近くかけてカヌーメンバーを浜まで移動させた。

どうにか現場に戻り、7艇のカヌーがオイルフェンス脇に集まって話し合う。

海上行動の終了時刻として決めている時間が近づいていた。

オイルフェンスを越えるのに手こずり、さらに海保のノロノロ運転で送られればタイムリミットを越えてしまいそうだ。

心身ともに疲労もたまっている。

今日はここで切り上げて撤退するのが無難な判断だ。

それでも、僕らは最後のワンチャンス、「10分だけトライしてみて、越えられなかった人はそこで引き下がろう」と決めた。

すぐさまそれぞれに散って、行動を始める。

無我夢中でオイルフェンスを越えた。

GBをかわそうと大きくターンしてカヌーの向きをかえて漕ぎだしたところで、GBから飛び込んだ海保にカヌーを抑えられてしまった。

振り返ってフェンスの方を見ると、外には誰も残っていなかった。

ほんの5分ほどで全員がオイルフェンスを越えたのだ。

 

 

 

生命の尊厳と自由を愛する皆さんへ

f:id:yamasa-kick:20180629014936j:image

 

辺野古 6/25

 

辺野古埋め立て許さない 第4回 海上座り込み】に多くの皆さんが参加してくれた。

呼びかけをした一人として、参加者の皆さんに感謝します。

行動全体の評価や反省は後日、仲間と振り返るとして、県知事に埋め立て承認の早期撤回を求める決議を、今まさに護岸の囲いが閉じられ土砂投入が始まろうとしている現場からの要請としてあげたことには、大きな意味があると感じている。

 

f:id:yamasa-kick:20180629015017j:image

 

午前中の行動の終盤に雷雲が近づき、午後に予定していた陸と海の連帯集会は中止となった。

連帯集会で、カヌーチームのメンバーとして発言させて頂く予定だったが、雨から逃れてテントの中で主に海上行動参加者への発言となった。

伝えたいことが様々あり、発言者として手を挙げたので心残りな所もある。

テントでの発言で割愛した部分も含めて、元の原稿をここにあげておくことで、誰かに読んでもらえれば幸いである。

 

f:id:yamasa-kick:20180629015107j:image

f:id:yamasa-kick:20180629015200j:image

f:id:yamasa-kick:20180629015218j:image

 

 

『4.25 浜の連帯集会 スピーチ原稿』

皆さんこんにちは。

山崎タヲルといいます。

浜の集会にお集まり頂き、大変に心強く感じています。

カヌーチームの一員として心より感謝致します。

今日は、ここにおいでの皆さんだけでなく、今この場にいない、日本全国で暮らす皆さん、そして、全世界の「生命の尊厳と自由を愛する皆さん」にも向けて、メッセージを伝えたいと思います。


今この辺野古の海は毎日毎日少しずつ殺されています。 

4年前の夏、最初は海底に穴を開けるボーリング調査という[小さな点]の破壊が始まりました。

それが重さ数十トンのコンクリートブロックという[大きな点]の破壊に変わり、 海へ捨て石のラインを伸ばす護岸工事では[点]から[線]の破壊になり、 現在は護岸で埋立区域を囲うという、[面]の破壊が始まりつつあります。 

やがて基地が作られてしまえば、滑走路から軍用機が飛びたち、このあたり一帯の[空間] が破壊され、 それは戦を呼び込み、私たちが暮らす一つの[時代]をも破壊することになるでしょう。


浜からも見えるあの護岸は、完成しているように見えるかもしれませんが、本来の設計の高さより6mほども低い状態、まだ製作途中段階の不十分なものです。

この状態で来月から土砂を囲いの中に入れていけば、台風や高波の時に土砂で濁った水が外へ流れ出てくることは目に見えています。

手順を守らず、環境を著しく破壊する土砂投入を許してはいけません。


護岸のあたりはジュゴンの餌となる海草が生い茂っていますが、ジュゴンはもうこの騒がしい海へは来なくなっています。 

産卵期を迎えたウミガメは今、卵を産むために戻ってきています。

しかし、護岸や海岸線に沿って伸ばされた仮設道路によって故郷の浜に上がれず、上陸できる場所を探してウロウロ彷徨っている姿を毎日のように見かけます。 

このあたりの岩場で巣を作り、雛を育てる渡り鳥のアジサシも工事区域周辺の岩場にはもう近づくことができません。 

大小さまざまな珊瑚も移植して保全する計画になっていますが、たとえ移植しても新しい環境に定着することが出来るのはごく一部であり、大半は死んでしまうので珊瑚の保全にはならないそうです。 

護岸の囲いの内側にはそういった希少な生き物だけではなく、色とりどりの小さな魚、ヤドカリやカニたち、名前も知らないたくさんの貝類、モズク、アマモといった植物などなど、 多様な命が生きていることを、僕らは実際に目にして知っています。


護岸の囲いが閉じられてしまえば、そこは外海と切り離されて、もう海ではなくなります。

水温や水質は激変し、内側にいた生き物の大半は死滅してしまうでしょう。 

この多くの命を守るため、翁長知事には護岸の囲いがまだ閉じられていない今すぐにでも 「埋めたて承認撤回」をして頂きたいです。 

県知事選挙を秋に控え、様々な政治的駆け引きがあるとは思います。 

しかし、命を守る行動こそが、政治的な主義主張や立場を越えて、多くの人々の共感を得ることが出来るはずです。

辺野古普天間基地の代替基地建設に抗う行動は、1997 年に始まった「命を守る会」の座り込みが原点であると聞いています。 

翁長知事がその原点に戻り、「命どぅ宝」を掲げて、先頭に立って国に抗う姿勢を示せば、人々の結束は再び高まるのではないでしょうか。

是非とも、命を守るために決断をして頂きたいです。


沖縄に過酷な米軍基地負担を強いているのは、この国全体の政治的な状況だということを、 沖縄に住んだこの2年間で、僕はより一層強く感じています。 

本土に生まれ育った僕は、沖縄を変えるのではなく、沖縄を支援したり応援したりするのでもなく、この国の政治のあり方を当事者の一人として変えていかなければならない、そのことが沖縄の基地問題を解決することになると思います。

ちっぽけな一人の人間に何ができるんだと笑われるかもしれません。

しかし、いまこの瞬間から僕たちが日々の行動と意識を変えたなら、世界の一部は確実に変わったことになります。

僕らは世界を変えることができるんです。 

信じて下さい、未来は僕たちの手の中にあります。

夢をあきらめずに、この愚かな基地建設をやめさせるため、それぞれの場所で、それぞれのやり方で、日々の行動を続けていきましょう。

ありがとうございました。

村井吉敬『エビと日本人II __暮らしのなかのグローバル化』から抜粋

f:id:yamasa-kick:20180616231401j:image

 

 町としては小さいがコレムの町のことを思い出して、スマトラ島沖地震津波を考えた。先に見たように、都市が津波を「怪獣のような殺人流体」に変えるのではないだろうか。マングローブ林伐採で、がら空きになった海から、都市のあらゆる芥(あくた)を押し流してきたのが津波であった。そしてマングローブ林の伐採は、エビ養殖と直結していたのである。

 

 

 

 東南アジアの海辺のマングローブ林から産出される輸入木炭の問題はわたしたちの暮らしに大きな原因がありそうだ。日本人が養殖エビを大量に輸入し、それをマングローブ木炭で焼き、ひたすら「美味しんぼ」する。しかし、せっかく「美味しんぼ」をしても、一方で従来日本で木炭の原料であったナラ、カシなどの広葉樹に代わって植えられたスギやヒノキのせいで花粉症が蔓延する。このような構図こそ「金満日本」の縮図なのかもしれない。アチェ津波、エビ養殖、マングローブとつないで見える構図に日本が大きく影を落としている。

f:id:yamasa-kick:20180616231312j:image

 

 

 

 世界の交易を支配しているのは世界規模のグローバル・コングロマリット(世界規模多国籍企業)である。世界最大のスーパーマーケットであるウォールマートで売られるTシャツは、韓国企業がインドネシアで低賃金を利用して生産している。世界ブランドのナイキのスポーツシューズもインドネシアベトナムの低賃金労働の上に成り立っている。もっとも大きな交易品である石油は誰が掘って、誰が儲けているのか。石油企業ロイヤル・ダッチ・シェル社の2004年の売上高は会社としては世界最高で269億ドル、エビ貿易額99.9億ドルの2.7倍にもなる。気の遠くなるようなグローバル大企業を前にすると、フェアトレードだけでは到底勝ち目はないと思わざるを得ない。が、しかし、にもかかわらずロイヤル・ダッチ・シェルの社員であれ、ナイキの社員であれ、ウォールマートの社員であれ消費者であることに変わりはない。世界のほとんどすべての人は、カネでモノを買う消費者である。消費者が消費の意識・行動を変えれば世界の交易のパターンは変わるのである。そう思う以外にない。

 

 

世界を見渡し、日々の暮らしを振り返り、どちらへ向かって未来を築いていくのか思い悩む時、ヒントになることがこの本にはいくつも書かれていた。

意識と行動を変えれば世界は変えられるのだ。

少なくとも、自分が変われば、76億分の1は確実に変わったことになる。

 

音楽を一緒に♪ 〜TOM WAITS & KRONOS QUARTET 『Diamond In Your Mind 』

毎日毎日

ため息の出るような話題ばかりだ

うっかり吐き出したため息は

すぐに「スーッ」と吸い込んでしまおう

それはいつか僕たちの中で宝に変わるものだからね

 


Tom Waits & Kronos Quartet - Diamond In Your Mind

 

f:id:yamasa-kick:20180609211308j:plain

台風が来るよ

護岸工事も少し止まるだろう

護岸で囲われて淀んだ水をかき混ぜてくれたら

中の生き物が助かるかもしれない

いつだって少しはいいことだってあるさ

ため息ばかりじゃそれも見えなくなる

見逃さないようにしないとね